会長挨拶

会長
國分 文也
(丸紅(株)取締役会長)

2022年は、世界がパンデミックという危機にようやく手探りの対応を見出しつつある中、ロシアのウクライナ侵攻という新たな危機が勃発した、波乱の一年となりました。極限まで高まった不透明感のもとでも、危機対応の政策発動の効果などから、米国をはじめとする主要国経済は想定以上の底堅さを発揮してきたと評価されます。一方で長期化する供給制約などとの複合的要因から物価は高騰、その対応が世界的な課題になりました。過熱気味の労働市場のもと、多くの国が引き締め気味の金融政策を継続せざるを得ないなど、現在に至っても政策運営には景気、物価、金融の安定性をバランスさせる困難な舵取りが強いられています。2023年の世界経済は緊急時に採用された政策の正常化という面からも、まさに正念場を迎えていると言えます。

ウクライナ危機は、米中摩擦などで既に分断の深まっていた国際社会に新たな亀裂を生じさせました。独立国を武力で制圧しようとする暴挙に対してさえ世界は一丸となれず、2大大国のもとで分断の色を濃くしています。地政学的リスクの拡大は、グローバルな社会・経済活動に長く負荷を与え続ける恐れがあります。

一方で、このように情勢が厳しさを増す中だからこそ、商社の果たせる役割は広がっているとも言えます。どのような形でサプライチェーンに経済安全保障の考えを組み込んでいくか、いかにカーボンニュートラルと経済性を兼ね備えたエネルギートランジションを実現するか、デジタル社会への移行をどのように支えていくかなど、商社が持つ知見や経験を活かすことが社会課題の解決につながる場面はさまざまです。もちろん世界が持続的に繁栄するためには自由な貿易・投資体制が欠かせない要素となります。最大限の自由貿易を希求する日本貿易会本来の姿はこれからも変わることはありません。

日本貿易会は「ともに築こう、サステナブルな世界を」をスローガンとし、これまで各国政府との対話、ビジネス環境改善のための政策提言の発出、会員向け情報提供といった活動を続けてまいりました。引き続き当会が有する3つの機能、Government Relations、Member Relations、Public Relationsの拡充を念頭に置いて、商社が直面しているさまざまな課題への対応を通じ、全てのステークホルダーのニーズにお応えできるよう、各種取り組みを継続していく所存です。また、国際社会貢献センター(ABIC)を通じた社会貢献は各方面から高い評価をいただいており、こうした活動にもいっそう注力してまいります。

今後とも当会の活動にますますのご理解、ご支援をたまわりますよう、重ねてお願い申し上げます。